騎士

 

20人ほどの若者が、バロン城の謁見の間に控えていた。

そして今、その中の1人の若者が前に出て、

王に騎士の誓いを立てようとしている。

「汝、カイン=ハイウインドよ。

これよりそなたに、バロン竜騎士団に所属する竜騎士の位を授ける。

国王の剣となり、国家を守護する盾となることを戦神ディルスに誓うか?」

「はい。カイン=ハイウインド、本日より陛下の剣となり、尊きバロン王国を守る盾となり、

この身を捧げることを誓います。」

王から下賜されるスピアを受け取って恭しく片ひざを突き、頭を垂れる。

今日は、騎士の位を授けられる拝命の儀。

この日を境に、位を授かった者は国家の騎士として認められるのである。

この儀式は騎士にとって、一生忘れられない栄えある日なのだ。

約2時間ほどの儀式は、同じようなやり取りを後の10人ほどに行い、

厳かな雰囲気のまま幕を閉じた。

 

カイン=ハイウインド、16歳。

これで今日から、晴れて亡き父と同じ竜騎士団の一員となった。

騎士として、国を守る剣となり盾となる。

それは、必要となれば魔物だけでなく、時には同族も殺すということだ。

戦時ともなれば、人を殺すのが兵や騎士の仕事。

戦場で人を殺す事をためらってはならないと、

幼い頃から兵学校に至るまで、ずっと教えられ続けていた。

異形の魔物ならば、恐れこそすれど、ほとんど誰も殺すことはためらわない。

だが、同族である人間を殺すとなると、

大抵の者は何かがブレーキをかけてしまうという。

もっともそれは新米には普通のことで、

それがないものは天性の殺人者か、心が狂っているかのどちらかだ。

退役した先輩の騎士でもある、カインの師がそう言っていた。

だが、かの人はこう続けていた。

戦場でそのブレーキに惑わされると、殺されるのは自分だと。

今日から一人前の騎士として認められた以上、

明日にでも戦場に送られる覚悟はカインも持っている。

もっとも、それが実際に戦場に立った時も揺るがないかと聞かれれば、

正直自分でも分からないかもしれない。

「明日から、俺はこの城で……。」

幼い頃から親しんだ竜と共に、

天かける稲妻と歌われる竜騎士団の一員として登城することとなる。

もちろん、いざとなれば戦場にも行く。

今は比較的平和とされるバロンだが、

時代の流れがいつ変わるかは誰にも分からない。

その時がくれば自らの意思に関わりなく、

相棒の飛竜と共に戦地へと赴くのだ。命の保障は、当然ない。

だがそれを恐れてはいけないのである。

騎士として任官できる喜びと共に、

さまざまな決意をカインは胸に秘め、城を出た。

「……帰るぞ。」

門のそばで待たせていた飛竜に声をかけ、

カインは飛竜と一緒に家路に着いた。

まだ日は高いが、少し落ち着くためにも今日は早く家に帰ることにしたのだ。

 

彼はこの後、数々の功績と飛竜と意思を通わす才を認められ、

晴れて竜騎士団隊長となる。

これはバロン王国500年の歴史上初めての、

親子2代隊長という快挙の実現だった。


 

―END― 

 

短いワンシーンタイプの小説。要するにSSです。

題材?になる絵がないと苦手です。書けません。

でもあると書けます。なぜかはもう自分でも分かりません(汗

絵は、去年度の先輩の卒業式中の落書きです。

いい根性だ……自分。ちなみに一応この横顔の線はこだわりました。
色が塗れないので、ごまかしがききませんから。